「新任バスガイド あいのり欲望ツアー」(2004/製作:TMC/監督・脚本:城定秀夫/製作:海津昭彦/企画:望月健二/プロデューサー:だもん/撮影:飯岡聖英/音楽:タルイタカヨシ/助監督:加藤義一/編集:城定秀夫/クレイアニメ:城定秀夫/制作協力:EMC/出演:桃瀬えみる・若瀬千夏・矢藤あき・鈴木さち・徳原晋一・吉岡睦夫・中村英児・むかい誠一、他)。
判り易過ぎるタイトルの最短距離ぶりが、かういふプログラミングされた領域としては百点満点に素晴らしい。要は合コンしながらバス旅行する、全くそれ以上でもそれ以下でもない物語である。主人公の新任バスガイド・優子を演じるのは、普通のレンズを使用してゐても、まるで魚眼レンズで撮つてゐるかのやうに映る桃瀬えみる。正しく“えみる”の名に相応しい、まるで二次元の幻想を3D化したかのやうな可愛らしい娘である。文面からは、褒めてゐるやうには全く伝はらないかも知れないが。
今回優子と、交際を始めて三ヶ月になる運転手・高岡(徳原)とが面倒を見る御一行は、如何にもギラついたギャル二人連れ、明美(矢藤)と亜矢(若瀬)。事前のサイト投票で人気トップ2の、医師の相川(中村)と木下(吉岡)。他に一応水着にはなる若い女と、台詞も特には与へられない若い男が若干名。なかみつせいじの量産型のやうな弁護士(むかい)と、補欠参加の三流大学生二人組。更に、ギャグ担当のオールドミス(鈴木)。木下が二人きりになつた亜矢に対し、遠いところを見るやうな目をしながら「無医村に診療所を開きたい」、だなどと中学生が脚本を書いたやうな夢を語るシーンには頭を抱へたが、後に化けの皮を剥がすとキッチリ挽回。安い役は安い役者に、それはひとつの真実であり、鉄則なのであらう。貪欲な明美が非道い目に遭ふ件も、描写としての表面的なハードさを保証すると同時に、自業自得だと観客の心理を巧みに補完する。マスだけ掻いたら後は早送り、だなどとさせるものか。特にはどうといふことも全くない始終に、城定秀夫は金色夜叉と読唇術と手話とで背骨を通し、起承転結を通してしつかりとしたエモーションを見させる。クライマックスのツアー告白タイム、量産型なかみつせいじがオールドミスにフラれてしまふギャグを挿みつつ、高岡は優子の影響で覚え始めた手話で優子にプロポーズする、菓子のオマケのやうなチャチいシークエンスではある。だが然し、そのチャチいシークエンスでチャチいままに観客を呆れさせるか、それともチャチいながらにエモーションに打ち震へさせるかで、作家としての雌雄は決せられるのではないか。城定秀夫はひとつひとつのシーンを丁寧に積み重ね、ラストの安いシークエンスを美しく輝かせる。超絶のデビュー作ほどではないものの、真心の込められた、全く良作の名に値する一本である。三流大学生二人組に、最後まで全くいいことの欠片もなかつたのは、ひとつ抜けてゐるやうな気もしないではないが。
意図的に書き残しておいたが、劇中、ツアーのマスコット・キャラクターである青クマさんと赤クマさんとが登場する、クレイアニメが挿入される。これが又、ロマンティックを加速させる狂ほしいほどに長閑な素晴らしい出来栄えで、一体これは誰の手によるものなのかとクレジットを刮目しながら追つてゐたところ、何とこのクレイアニメを製作したのも城定秀夫。こんなワイルド・カードも持つてゐたのか!正しく必殺、恐るべし。恐ろしいだけに。Vシネなんて何時でも撮れる、などと言つては、間違つてゐるのかも知れない以前に、Vシネを一生懸命追ひ駆けてをられる諸兄からは殴られてしまひかねない。とはいへそんなこんなも承知と覚悟の上で重ねて言ふが、城定秀夫にはVシネはさて措き、是が非とも本篇に帰還してピンクを撮つて頂きたい。認めたくはないが、ピンクにはもう時間が残されてゐないかも知れないのだ。
最後に余談。ピンク映画界の要潤こと―誰がそんなことを言つてゐるのだ、俺以外に―中村英児は、髪を伸ばしてゐた方が顔の曲がりが補正され男前に見える、と思ふ。