真夜中のドロップアウトカウボーイズ@新館

ピンク映画は見るか観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為

淫絶!人妻をやる

 「淫絶!人妻をやる」(2006/製作・配給:新東宝映画/脚本・監督:深町章/企画:福俵満/撮影:清水正二/編集:酒井正次/録音:シネキャビン/助監督:佐藤吏/監督助手:茂木孝幸/撮影助手:長谷川卓也/照明応援:広瀬寛巳/選曲:梅沢身知子/スチール:大崎正浩/現像:東映ラボ・テック/里見瑶子・藍山みなみ・水原香菜恵・なかみつせいじ・平川直大・牧村耕次)。
 白髪の老婆が二人、水辺に車椅子を並べてゐる。互ひにあの時、患者と女医として再会を果たした驚きを振り返る。女医であつた女は告白する、「そして・・・私は鬼にされた・・!」。
 四十年前、夫・野沢俊介(平川)と平穏な結婚生活を送つてゐた亜紀子(里見)は、急に精神の平定を乱す。電話の受話音に過剰に反応するやうになり、終には包丁を振り乱し電話線を切断するに至る。野沢は、亜紀子を精神科医の佐伯恭司(なかみつ)に診せる。佐伯は妻でインターンの悦子(水原)とともに、山間の診療所―といふ次第で、要は毎度の水上荘ものである―にて亜紀子をカウンセリングする。電話の主こそが亜紀子のノイローゼの元凶である、と踏んだ佐伯はわざと亜紀子に電話をかけ、狂乱する亜紀子に悦子が無理矢理電話を取らせる。電話の主を演じた佐伯の誘導尋問により、亜紀子のノイローゼの原因は、三ヶ月前に野沢と買ひ物に出てゐたところ偶々遭遇した、野沢が勤務する会社の取引先「黒崎工業」の営業部長・沼田明(牧村)にあると判明する。沼田は、亜紀子の過去を知る男であつた。佐伯の丹念なカウンセリングを経て、亜紀子は胸に秘め独り苦しんでゐた秘密を吐き出し、回復する。その直後、テレビのニュースが沼田が殺害された事件を伝へる・・・・
 CM込みで二時間のサスペンス・ドラマでいふと、十分で片づけ得よう種明かしを、濡れ場で水増ししつつそれだけで一時間の映画にしてしまつたやうな一作。などといへば元も子もないが、まあひとつの物語を丁寧に形にしてある点だけは評価出来る、その割にタイトルは出鱈目ではあるが。まあ、ままある例(ためし)である。
 大絶賛―実質―三番手濡れ場要員を務める藍山みなみは、野沢の不倫相手・江藤倫子。亜紀子が要は壊れた一大事に基く最後の情を交し、ラブホテルのベッドの上で自ら別れを野沢に告げる件が出色。別れざるを得なくなつてしまつたため、別れる前提での情交ののち、せめてもの矜持で女の方から別離を切り出す。ちやんとした脚本を与へてあげれば、藍山みなみにはかういふストロングスタイルの芝居も出来るのか、といふ発見が今作に於ける最も大きな収穫であつた。
 更にその数年前に同じ秘密を共有する亜紀子と悦子の、四十年前時制での再会の描き方が、少々弱かつたやうな気がする。初めは―四十年前時制で―亜紀子はノイローゼであつたとしても、回復後、改めて悦子の顔をまじまじと見るにつけ「ナンシー・・・!?」と絶句しかけ、訝しむ佐伯を悦子が制して胡麻化す、といつたくらゐのカットは設けてあつて然るべきではなかつたらうか。
 それと水上荘ロケゆゑではあれ、俊介の家は、若いサラリーマンの家にしては不釣合ひに徒広くも映る。