真夜中のドロップアウトカウボーイズ@新館

ピンク映画は見るか観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為

セーラー服色情飼育/ex.DMM戦

 「セーラー服色情飼育」(昭和57/製作:フィルム・ワーカーズ/配給:株式会社にっかつ/監督:渡辺護/脚本:小水ガイラ/撮影:鈴木史郎/照明:近藤兼太郎/編集:田中修/音楽:飛べないアヒル/助監督:松本洋二/撮影助手:水野泰樹・榎本靖/照明助手:遠藤大輔/現像:東洋現像所/録音:銀座サウンド/出演:可愛かずみ⦅新人⦆・今日珠実・杉佳代子・下元史朗)。
 セーラー服を着た可愛かずみの、ポートレートが貼り巡らされた壁。下元史朗の背中、「俺だけの、俺一人だけのために咲くんだ・・・・」。要は通りすがりの女子高生に―どうかした勢ひで―岡惚れを拗らせた、今でいふストーカーの部屋。如何にも渡辺護らしい傲岸なミソジニーと、男主役の独善的で歪んだ造形が綺麗に親和する。改めて動く、可愛かずみの映像にタイトル・イン。動画と静止画交互のタイトルバックから、再度男の居室に上手いこと繋げる本篇導入がさりげなく超絶。
 アバンを遡る、夕の初め。都電駅近くで岡田美貴子(可愛)を激越に見初めた、学名不詳大学文化人類学情報科研究室所属の講師・吉松正彦(下元)は、踵を返すとマンションまで尾行。何気に触れておきたいのがその道程、常に何某か越しでなければロングを抜かないか抜けない、呪ひでも怖い魔法使ひにかけられたかのやうな、強迫性の範疇に片足突つ込んだ撮影が地味に火を噴く。閑話、休題。帰宅する娘とちやうど入れ違ひで買物に向かふ、母の多美(杉)と美貴子が二人暮らしであるのを表札で確認した吉松は、昔日のオープンな電話帳で電話番号まで突き止める、ノーガードともいふ。ところで、当初去就の全く語られない、美貴子の父親は年時不明で既に死別、遺影一枚見切れないほゞ等閑視の扱ひ。
 配役残り、華麗に女の裸の火蓋を切る今日珠実は、吉松の研究室に―フランク極まりなく―出入りする女子大生の向井恵子。へべれけなレポートを提出しておきながら、いはゆる枕で単位を強請る返す刀で、継続的な関係を吉松と持つてゐた節を窺はせる。あとこの人も、改名してゐないならロマポ的には初陣の筈。なけなしのバジェットは主演女優であらかた使ひ果たしたのか、背景に見切れる人影人の群れを除き、俳優部はクレジットされる四人以外、本当に猫一匹出て来ない。
 億単位となると、ピンクに気持ち毛を生やした程度の、買取系の製作費で往時少なくとも数十倍の興収を弾き出した、渡辺護昭和57年最終第十三作。恐らくこの御仁的に、最大のヒット作となるのではなからうか。
 将を射んとする者は先づ馬を射よ、とでもいはんばかりに。第二四半尺を丸々費やす、吉松が先に多美からオトす岡田家篭絡、もとい攻略戦と―エクストリームに狙ひ通り運ぶ―その功の奏し具合は、正直ファンタジーの領域に両足どころか腰まで浸かる。思ひ出した女の悦びに多美が狂ふ、ツッヤツヤの演技か艶技で杉佳代子が大いに気を吐きつつ、あの可愛かずみが、大きなお胸を惜し気もなく御披露。なさるエポックの賞味期限も、遥か遠く過ぎ去つた時の彼方に切れたこの期に及んでは、肝心要の“色情飼育”自体―の内実―は果てしなく広大な行間を到底埋め難い、所詮大概な力業か絵空事、無理筋ともいふ。今なほ今作を激賞して已まない、リアタイ勢の熱量に水を差すつもりなど特段ないが、フラットな目で眺める分には、生物―あるいは下元史朗を愛でる―映画といふ印象が総体的には強い。寧ろ、多美の再婚即ち、吉松の初婚前後に冷やかしか賑やかしの形でなら幾らでも―恵子を―放り込み得た、今日珠実が鮮やかな一幕・アンド・アウェイで序盤を颯爽と駆け抜ける。画期的か圧倒的なまでに清々しい三番手ぶりこそが、四十年強経た上で現在も些かたりとて輝きを失はぬ、裸映画的に真のハイライト。形式上三人目に杉佳代子の名前が並ぶビリングは、女優部トメと解するのが相当にさうゐない。

 実は美貴子の処女性に関し詰めきれてゐないのでなく、意図的に詰めきつてゐない含みを残したまゝ、美貴子と吉松の二人が、多分原宿辺りを適当に散策するエピローグ的なラスト。可愛かずみの大正義ボストンで、睛を点ぜられた竜が天に昇る。